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2008年02月03日

ある経営者との「会話」

ある経営者の「悩み」

「時間はあるかね?」
「はい。今夜は福岡のアパートに帰るだけですから時間は大丈夫です」
「少し話をしようか」
「はい」

「煙草吸ってかまわんよ。俺は5年前に止めたがね」
「そうですか・・・。では失礼して・・・」
「うまそうに吸いやがるな。煙草を止めようと思ったことはないのかね」
「毎朝、思っています」
「でも止められない?・・・・」
「はい。考え事を始めると煙草を吸う傾向があるのですが、のどが痛くて咳が止まらず、朝一番に煙草を止めようかなと考え始めると、その考えをまとめるためにまず煙草に火をつける・・・」
「まるで漫画だな」
「これが止められればもっといいコンサルタントになっていると思います」
「意思が弱いということか」
「どうも意思が豆腐で出来てるようで、いつもふにゃふにゃしています」
「ハハ、意思が豆腐ね。開き直っているところがおかしいな。その割にはブログを毎日書いている。意思が豆腐ではなかなか出来ることじゃないと思うがね」
「最初から毎日書き続けようと思っていたわけではないんですが、何となくそんな流れが出来てしまいました。それと半年くらい書き続けたころに、四国のある企業の社長が毎日書き続けていることを知って驚かれ【それはまさに”行(ぎょう)”だ。とじきさん、毎日続けなさい】と言われまして、”行”だと思ったら止められなくなりました」
「修行の”行”かね」
「はい、そうですね」
「修行で毎日ブログを書くか・・・。面白いことを言うな、というより変わっているな」
「・・・・・」
「3日くらいかけて、君のブログを全部読ませてもらったよ。ずいぶん面白いかことを書いているな」
「それはどうも・・・。ありがとうございます、と言うべきでしょうか」

「ひとつ質問したいのだが、組織がね、どうしても自分の思っているような動きをしない。売り上げも伸びている、利益も何とか出せそうだ。社内の雰囲気も決して悪いわけではない。将来のことについてもそれなりに手を打っているつもりで、昔みたいに夜眠れないということもない。しかし、どうもしっくりこない。どうしてだろうね・・・・」
「・・・・組織の個別の話ではないけれどもいいですか?」
「かまわんよ。自由に話してくれ」

「最近ずいぶん運転が下手になりまして、昔みたいにスカッとした運転が出来なくなりました」
「人間、誰でも歳をとるものだ。何もかも昔通りにはいかんだろう。先日自転車の件でそんな話を書いていなかったか?」
「はい。確かに歳をとって、運動神経も反射神経も衰えを自覚しています。しかしそれでもなお、運転をする時に余りにもひど過ぎる。昔楽々と滑らせていたコーナーが曲がれない。自分の思い描いたラインをオーバーする。カーブの途中でブレーキを一度入れる必要がある・・・。何度も挑戦するんですが、昔のようには行かない。はて、なぜだろうと必死で考えました」
「・・・・・・」
「理由は単純なことでした。システムの問題でした」
「システム・・・・?」
「社長が最後に【棒ギア】の車に乗ったのはいつですか?」
「フロアシフトか・・・。うーん、専務時代に乗った車はオートマだったからもう20年以上前になるかな」
「それ以前は?」
「セリカだったよ」
「ダルマセリカ?」
「詳しいな。君は何に乗っていたんだ?」
「サニーGXクーペに始まって、ラングレーやスカイラインです」
「日産か、俺の敵だな・・・」
「ライバルって言ってくれませんか?」
「いや、明らかに敵だ!」



「・・・好みは別にして、システムの話です」
「・・・・・」
「今は多くの車は【オートマ】です。エンジンをかけてレンジをドライブに合わせれば、スタートから上り坂、下り坂、コーナーまで何の問題もなく動きます。しかし、昔は、ロー、セコ、サード、ドライブ(4速)、オーバードライブ(5速)と手動でクラッチを合わせながら切り替えをする必要がありました。特にコーナーに飛び込むときは、ギアを一段、または二段落としていました。ギアを一段落とすということは、まずエンジンブレーキがかかる。すなわち減速をする。同時にエンジンの回転数は上がります。2000回転から一気に4000回転、ひどい時には6000回転くらいまで一気に上がる。減速をしつつ、同時にエンジンの回転数を上げ、コーナーに突っ込む。そしてリアの我慢すべき状態を全神経を総動員して感知し、ここだと思う瞬間に一気にアクセルを踏みつける。仮にリアが滑り出しても、一気の加速により建て直しが可能で、次の直線、次のコーナーに飛び込んでゆく。昔はそうした運転を程度の差こそあれ、普通に行っていたものでした。ところがオートマになってからは違う。全て自動車の自動制御任せ。何よりもアクセルワークだけしかドライバーに許されていない。ごくまれにオートマの2速や3速を使ったとしても、人間の動作と車の反応の間にタイムラグがあり、制御不能の領域に近づく寸前にブレーキングが必要になる」
「・・・・・」
「最初からオートマに乗り付けた人間には判らない感覚が、【棒ギア】で運転を始めた人間にはあります。便利さと機能は両立しない。原点に関しては、昔の方が優れていたことが多くあるように思います」
「それと、組織の機能に関する関係は?」

「たとえば、携帯電話です」
「・・・・・」
「昔は、携帯電話などなくても、営業は年間数億円の受注を上げていた。現場は1億円の施工を行っていた。その頃の組織の仕組みはまさに【棒ギア】です。誰がどこにいるのか。明日何をするのか。何をしなければならないか、組織の全員が知っていた。しかし今は違います。携帯電話で連絡をしなければ、どこにいるのか、どこに向かおうとしているのか、組織の人間がわからない。全体の動きが、携帯電話と言う便利な機械でつかめなくなってきている。だから時々、ブレーキングの必要がある。だから必要な時に加速できない・・・・・」
「携帯電話を使うのを止めさせるか?」
「そんなことを言っているのじゃありません。システム、すなわち組織の仕組みの問題を言っているのです。精度を上げるために何が必要か?何をさせるべきか?何をさせないでおくか?何を禁止させるべきなのか・・・・」
「・・・・・」
「今日の会議の最中に常務は携帯のメールを二度見ました。現場の報告と来週の予定の最中でした。一回は机の下で返信をしていました・・・・」
「気付いていたか?・・・・」
「はい。メールが悪いのではありません。必要なメールだったのかも知れない。それも緊急のことだったのかもしれない。しかし、そこで試される組織の【何もの】かもあります」
「・・・・・」
「経営の原点を組織の原点を問い直すと【棒ギアとオートマ】の関係になります」

「うーん、何となく判る。いや、はっきり判る。・・・・・少し考えてみよう」
「はい」
「ところで、今、何の車に乗っている?」
「日産のフーガです」
「4500CCか?」
「いえ、残念ながら3500です」
「馬力は?」
「180馬力です」
「走るか?」
「かなり・・・・」
「今度俺の車と勝負するか?」
「社長申し訳ないですが、クラウンには負けませんよ。吹き上がり、足回り。テクニックには少々問題はありますが、クラウンとでは勝負になりません」
「いや、BMだ。自宅にもう一台車があってな。5シリーズのMテックだ。今度勝負しよう」
「・・・・・!それは、社長、卑怯です!・・・・」
「走りには自信のありそうなことを言っていた。生意気なコンサルタントの鼻はへし折っておく必要がありそうだ」
「Mテックはいけません。あれは化け物です!」
「乗ったことがあるのか?」
「知り合いのMテックで事故りかけたことがあります。若い頃ですが・・・。ポルシェは交差点のど真ん中でエンストをさせて回りから大笑いされたことがあります」
「ハハハ・・・。【やんちゃ】だったのかな?まあいい。遅くまでありがとう。オンボロローレルはもう止めろ。いくら営業車でもあれはひどい。板金塗装をやり直してクラッシクに乗るか、俺のBMを貸してやる」
「うーん、考えておきます・・・・」
「お疲れさん。来月も待ってるよ。気をつけて帰れよ。点数あんまりないんだろう?」
「・・・はい。・・・・・失礼します」

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posted by tojiki at 00:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | ある経営者との会話 この記事をはてなブックマークに登録
この記事へのコメント
【棒ギアとオートマ】の関係、興味深く読ませて頂きました。私は車は最初からATですが
バイクはスポーツタイプ一筋なのですごく説得力がある話でした・・。
「原点に関しては、昔の方が優れていたことが多くあるように思います」・・・。考えさせられます。

携帯電話はポケベル末期世代の私にとって道具ですが、十代の若者にとっては体の一部です。使用割合はメールと通話が8:2。失くして困るのは財布ではなく携帯です。
小さな画面の100文字が彼らの思考形態の基礎であり、その画面以前やそれ以上の文章は考える事が出来なくなってきています。
すべての若者がそうではありませんが、平成生まれの新卒が続々と社会へ流れ込んで来ています。
携帯ひとつ取ってもシステム構築以前の前提条件を洗い直す必要があるかもしれません。
Posted by ko-ji at 2008年02月05日 02:43
Ko-ji さま

コメントありがとうございます。

〜 システム構築以前の前提条件を洗い直す必要 〜
まさにこれが最大の問題ではないかと考えています。

建設の現場に従事したことのある私は、20数年前現場で
「釘を拾え!」
と言われ続けてきました。「釘一本が銭」と言われたものです。ところが今は誰もそれを言わない。なぜならば、「釘を拾う」より人件費を考えたら「買ってきた方」が安くつくからです。
だから誰も「釘を落とさない方法」を考えない。

本質を忘れ、テクニックや合理性に偏った時「クラッシュ」が起こる。最近の日本の諸問題の根底には、この「本質を忘れて」という前提にあるような気がします。

とじき
Posted by 戸敷 進一 at 2008年02月05日 23:22
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